粥彦

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2017年 02月 12日

土塊 (つちくれ)


土塊(つちくれ)

わたくしの頭のなかに蒔かれた種。その大部分はそのまま土に返ってしまった。掘り返しても土塊と見分けがつかない。種は、種を失ったのだろうか。

不意に、死んだらどうなるのだろう。という問いが土塊からなされる。て淋しいね、とわたくしは答える。その問い自体が淋しくって仕方がない。土塊は黙る。黙らないでほしい。

土塊はわれわれの死者をすべて受け入れてきた。死者の呼吸が土塊であり、死者の栄養が土塊であり、死者の存在が土塊である。最も死者を知るものは土塊なのだ。

そのくせ土塊はわたくしに問う。死んだらどうなるのだろう。問いの中に、いやあなたの中にすでに答えがあるではないか、土塊よ。

生きている者は、滑稽なだけ。わたくしは幾人かの死者の眼に晒され動かされている。何故なら死者を裏切ることは決してできないからだ。

完黙の土塊は死者を丁重に扱い続けてきた。わたくしは死者と一体化した土塊が怖い。わたくしはわたくしの死者に操られている。

やはり新しい種を蒔こうと思う。そう思い直したわたくしは静かに種を手にふくませた。種蒔くわたくしの姿は、祈りの儀式にも似ていた。



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by kayu_hiko | 2017-02-12 19:24 | 作品 | Comments(0)


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